英美子(山崎静代)が丈洋の介護士になったワケ
英美子が丈洋の介護士になったのは、異物を詰まらせたところを救ったことがきっかけだった。英美子はもともと指名ナンバー1のエース介護士で、入居者はもちろん、職員からの評判もすこぶるいい。それに加え、「無断欠勤」あらため、「無断出勤」するほどの情熱的な働きっぷり。
介護士を志した理由も、死んだ父親の最期を看取れなかった心残りからだった。かなりの聖人君子だが、まさに「順にいて逆を忘れず 逆にいて己を捨てず」。英美子をいい人…と思い込むには、ちょっと危険な気もしてしまうのだ。
というのも、英美子を叩けば埃が出てきた。一族が入手した動画に収められていたのは、一見さんお断りの店で200万円のボストンバッグを購入する彼女の姿だった。遺産目当て疑惑をかけられた英美子は、すぐさま丈洋への誕生日プレゼントだったと泣きながら謝罪。あきらかに自分用で、苦しい言い訳ではあったのだが…。
「腹の中なんてのは誰にも見えんだろ? だったら見えるものだけでいい わたしはそれを信じるよ」という丈洋のセリフを聞くに、彼もうっすら英美子に疑いを抱いてはいるものの、信じたい気持ちで抑え込んでいる状態なのだろう。
滅多に顔を見せない、誕生日すら覚えていない子どもたちより、たとえ悪女の疑いがあろうと優しく接してくれる英美子の肩を持ちたい気持ちは少しわかる気がする。でも、見えるものしか見ようとしていない丈洋の姿は、どこかやっぱり切ない。