奈緒が演じる鴻田麻里の“熱量”
なぜ視聴後にスッキリ感を味わえるのかといえば、まず事件の内容がとても分かりやすい。最近の刑事ドラマの事件は特殊なものにして、伏線を張り巡らすことで、視聴者の興味を引こうとする傾向は否めない。その事件を解決する側の刑事も過去が見える、記憶力が異常にいい、嘘を見抜く、死者のデータを活用する…など、これは超常現象なのかと思うような解決方法を用いてくるパターンも散見される。ドラマは非日常を楽しむエンタメなのだから、決してこれらが悪いわけではない。でもね、ちょっと観ている側も疲れてくるし、飽きてくる。これらの現象は単に趣味趣向なのかもしれないけれど、個人的には食傷気味だ。
そんな最中で『東京サラダボウル』の分かりやすさには好感がもてる。刑事が現場に出て、真犯人へ辿り着く。そんなスタンダードさに溜飲が下がる。
鴻田が扱っている外国人労働者は今、私たちにとっても身近な存在だ。コンビニエンスストア、飲食店、医療機関など、日本人と同一に働いている様子に遭遇することは、もう日常になった。物語の舞台になっている新宿区だけに限らず、全国に外国人労働者たちの居場所は広がっている。
令和6年度版・厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると「外国人労働者数は2,302,587人で前年比253,912人増加し、届出が義務化された平成19年以降、過去最多を更新」と記されている。これだけの数が滞在するのなら、外国人は日本を支える立派な労働力だ。
彼らの多くは母国で待つ家族のために日本で働いているが、言語や習慣の違い、そもそもの人の良さから事件に巻き込まれる傾向が高い。戸籍売買、違法薬物所持など知らぬ間に犯罪者になっているケースも多い。刑事たちは外国人をとにかく疑い、強制送還することを考えるが鴻田は違う。
「自分の目で見たこと以外信じたくない」
そう言って愚直に自分の足で事件の背景を調べ尽くす。この熱量が観る側に跳ね返っているのだと私は思う。