他人の意見に耳を傾け、スポンジのように吸収する
続けて、3つめのポイントは以下の通りだ。
③周囲の言葉に耳を傾け、アイデアのヒントにする
蔦重のアイデアは独創的であるが、それらは周囲との交流の中から生まれたものが多い。例えば、第3話では、『一目千本』という女郎を花に見立てた本が生まれたが、この本は重政(橋本淳)と蔦重とのやりとりから誕生した。
蔦重は他人の意見に耳を傾け、スポンジのように吸収する。そして、彼はその吸収したものに自分のアイデアを加えて、新しいモノを生み出している。
蔦重は自らの内に閉じこもって何かを導き出すというよりも、人との交流の中でアイデアをひらめいていることが多い。
④他者を尊敬し、思いやる
蔦重は人を蹴落とそうとは考えないし、他者に敬意をいつも抱いている。例えば、孫兵衛が節用集の海賊版を手掛けて失堕し、自分に版元になれるチャンスが巡ってきたときも手放しで喜んではいなかった。孫兵衛の失態に心を痛めていたし、彼の犯行を止めなかった自分を責めてもいた。
また、“忘八”といわれる女郎屋の主人たちに対しても、頼み事をするときは頭を深々と下げるし、彼らにぞんざいな扱いを受けても恨みつらみを抱いていないようだ。
蔦重のビジネスの成功は彼の創造力だけでなく、人間力の賜物だ。“善い行いは自分に返って”とよくいわれるが、蔦重の成功は因果応報の法則にあるといえよう。
(文・西田梨紗)
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