「男性」の生きづらさと「女性」の生きづらさは無関係ではない
でも、上野のどこが感情的なのだろう。「そういうことじゃなくて」と言いかけて言葉を呑み込み、涙を目に溜めながら、でも決して泣かず冷静に意見を伝え、自分の企画が却下され、「女性主人公ならラブコメか復讐もので」と上司から無茶苦茶なオーダーを受けても、「自分のやりたいことをどうやって掛け合わせるかの勝負」と心を立て直して仕事に臨む。男性の後輩から舐められた態度を取られても、怒らない。悲しいほどに、大人だ。
でも、そうしなければ男性社会の中では生きていけないのだろう。たとえ、「女だから」という不当な理由で意見を聞いてもらえなくても、「私が私だからダメなんだ」と上野が自分に言い聞かせるのは、そう思わなければ心が崩れてしまうからなのかもしれない。
それだけ必死に感情を抑えていても、ちょっとした表情や態度を取り沙汰されて、「またイライラしてるよ」「怖い怖い」と男性社員たちに陰口を叩かれる。そうやって男性同士で徒党を組み、女性を仲間外れにすることで、彼らは絆を深めているのだ。
そんなホモソーシャルなノリに苦しめられるのは女性だけじゃない。女性を女性だからという理由で排除するホモソーシャルは同時に、男性に男性らしさを強要する。「男は強くあれ」「弱音を吐くな」と。だから、優太が抱える生きづらさと、上野が抱える生きづらさは決して無関係ではないのだ。
優太は耕助から教えてもらったレシピで、多忙で食事もまともにとれていない上野に唐揚げを作る。
「俺、舐めないし、仲間外れにしない。いつも頑張ってるのも知ってる。上野は上野でいい。間違ってない。上野が上野だからダメなんて絶対にない」
本作は男性同士のケアを描いているが、その上でホモソーシャルの問題は避けて通れない。優太のように少しずつ解体していく必要がある。足元に散らかったゴミや洗濯物を少しずつ片付けていくように。
(文・苫とり子)
水ドラ25「晩餐ブルース」
テレ東ほか 毎週水曜 深夜1:00~深夜1:30
各話放送終了後から、動画配信サービス「U-NEXT」「TELASA」「J:COM STREAM」「milplus」「Prime Video」 にて順次見放題配信
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