信じてくれている人がいることで、人生を立て直せることもある
設備投資する前に妻と話し合えていたら。会社が潰れた日、家に帰って真っ先に「当分苦労かけるけど、俺についてきてくれないか」と言えていたら。違法薬物の使用を誘われた時に毅然と断れていたら。
そんな後悔ばかりの人生に現れたのが、春生(リリー・フランキー)だった。染田の事情聴取を担当した春生は、「私はね、あなたが希望を持って生きていく姿が見たいんだ。それが見たいなぁ。染田さん」と、まるで身内のように語りかける。
きっと春生には、その時すでに希望を持って生きている染田の姿が見えていたのではないだろうか。少なくとも春生は染田のことを諦めてなどいなくて、真っ当に生きていく力を信じていた。
「信じる」ということが大きなテーマになっている本作。自分を信じてくれている人がいるという事実は、時に人を守る。染田はあのまま春生に出会わず、出所していたら、また間違った道を進んでいたかもしれない。けれど、春生が自分を信じてくれているから、染田は苦しい離脱症状を乗り越え、ラーメン屋台を開業するまで人生を立て直すことができた。
逆に、信じることで救われる人もいる。友哉(成田凌)は父・力郎(酒向芳)の無実を信じることで、どうにか生きてこられたのだろう。そんな友哉にとって、「力郎さんは東賀山事件の犯人ではない」という春生の言葉はどれほどの希望だったのか。