父親との決別

『リラの花咲くけものみち』 第3話 ©NHK
『リラの花咲くけものみち』 第3話 ©NHK

 チドリとの突然の別れにも取り乱さず、聡里は気丈に喪主を務めた。その後、孝之から家族でもう一度暮らさないかと誘われる。今更、何を言っているのだろう。

 仕事にかまけて聡里のことを放ったらかしにし、事情を知っても「パールは犬だ。人間じゃない」とパールだけが心の支えだった彼女の気持ちを理解しようともしない。

 そんな父親にも聡里は大学まで行かせてくれたことに感謝を述べた上で、毅然と決別を告げる。これから大学で一緒に学ぶ人たちと挨拶すら交わせず、チドリの背中に隠れていた頃からは考えられないくらい強くなった聡里。

 その強さが強がりにも見えて切なくあったが、「聡里のおばあちゃんは(命が終わる瞬間まで自分の弱みを隠す)野鳥のような人だった」と言ってくれた残雪(萩原利久)のそばで気の済むまで泣くことができて良かった。

 聡里をいつも側で見守ってくれていた母の有紀子(安藤聖)もパールもチドリも、もうこの世にはいない。でも、今は代わりに残雪や綾華(當真あみ)たち仲間が支えてくれている。

 それは聡里が自分の人生を諦めず、頑張ってきたから。彼女が諦めることがないように、優しく背中を押し続けてくれたチドリのおかげでもある。自分の足で歩み始めた聡里の姿を見届け、チドリも安心して旅立つことができたのではないだろうか。

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