獣医師は、動物に関わる人間の人生をも左右する
消えていく命もあれば、生まれてくる命もある。北農大学の4年生となり、獣医師・能見(甲本雅裕)のもとで大動物の実習をしていた聡里は、折原勝喜(温水洋一)・美和(水木薫)が夫妻が経営する牧場で仔牛の出産に携わることに。
ところが、破水から時間が経っても仔牛は産まれてこない。その状況に一番焦りを感じていたのが、いずれは牧場を継ごうとしている折原夫妻の孫・七海(大石愛陽)だ。実は折原牧場はコロナの打撃を受け、新しい牛が産まれなければ、経営を続けていくことが難しい状況にあった。
これまで良くも悪くも動物のことしか考えていなかった聡里。卒業後は伴侶動物の医者になろうとしていた彼女が大動物の実習に参加することになったのは、静原(石橋静河)や久恒(山崎静代)に、もう少し視野を広げた方がいいとアドバイスされたからだった。
獣医師は、動物の命と向き合う仕事だ。しかし、同時にその動物と関わる人間の人生をも左右する責務を負っている。聡里は折原一家との出会いをきっかけに、そこに目を向けられるようになった。
仔牛の前脚にロープを引っ掛け、母牛の胎内から取り出そうとする中、七海が「仔牛が窒息しちゃう!やめて!」と、かつての聡里のように叫ぶ。でも、もう可哀想という一時の感情にとらわれていた頃の聡里ではない。
あの時、生まれるはずだった仔馬は助けることができなかった。けれど、代わりに生き延びた母馬は新たに妊娠し、仔馬を無事に出産。
生まれていた仔馬にはスノー・パールという名が授けられる。当時は、聡里が受け入れられなかった能見の咄嗟の判断がなければ、母馬も助からず、スノー・パールは生まれてこなかったかもしれないのだ。