聡里が選んだ「けものみち」
そして今、聡里は牧場の牛も人も救うため、逃げずに最善を尽くそうとしている。七海の不安に寄り添いつつも決して手を止めず、能見とともに見事仔牛を取り上げた。
まるでドキュメンタリーのような臨場感。生まれてきたばかりの仔牛を母牛が舐めて綺麗にしてあげる光景に思わず涙が出そうになる。
太陽の光を浴びて育った花や草木、それらを食べて育った牛や豚、その命をいただいている我々人間。命あるものは皆、知らず知らずのうちにバトン=生きる力を受け取っている。
聡里も有紀子が命懸けで出産に挑んだから、この世に生まれ落ちることができた。辛かった時にパールがそばにいてくれたから、チドリがあの部屋から連れ出してくれたから、大学の仲間たちが励ましてくれたから、今の聡里がいる。
そんな聡里が仔牛を助け、牧場の未来まで救った。そしてやがて成長した仔牛がまた新たな命を産み、牧場は折原夫妻の手から孫の七海に渡る。
その循環を、これからも見届けていきたいと思った聡里。残雪との電話越しで、気づいたら「私、大動物の獣医師になる」という言葉が口を突いて出ていた。
様々な経験と出会いから自分の進むべき道を選んだ聡里、最初から最後まで大好きな野鳥を守りたいという思いを貫いた残雪、血を見るのが怖いという獣医師としては致命的な弱点を抱えながらも製薬会社でバックヤードから動物と人を支えることを決めた綾華。
それぞれが自分で決めた“けものみち”を、力強く進んでいく。その眩しいほどの命の輝きを見せてくれた本作。たくさんの生命が息づく北海道の壮大な景色と、若手な重厚な演技力を持つキャストたちが物語を彩っていた。
(文・苫とり子)
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