蔦重(横浜流星)がまるで鬼編集者のよう

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第7話 ©NHK
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第7話 ©NHK

 今よりも薄くすることができれば、客は持ち運びが楽になるし、紙代も削減できる。まさに一石二鳥。これが2つ目のポイントである。

 もちろん、中身は薄くしない。まずはこれまでの細見をもとに内容を精査し、省くところは省き、必要な情報は細かい字でびっしりと書き込むことに。下書きは主に新之助が担当し、それを彫師の四五六(肥後克広)が板木に掘り起こしていく。

 その作業場は、まるでブラック出版社。女郎屋から次々と最新情報が上がってくるので、そのたびに下書きを書き直さなければならない。何せ文字が小さいから、彫るのも一苦労だ。ヒーヒー言ってる新之助と四五六のケツを容赦なく叩く蔦重はさしずめ鬼編集者か。

 それでも、一肌脱いでやるかと思わせるだけの気概が今の蔦重にはある。「せいぜいありがたくいただいておけ。それが粟餅を落としたやつへのたむけってもんだぜ」と平蔵(中村隼人)に言われた時から、明らかに蔦重の目の色が変わった。

 鱗形屋の一件は本来、蔦重には何の責任もない。事情があったとはいえ、罪とわかっていながら偽版に手を出したのは鱗形屋であり、裁かれて当然のこと。蔦重は疑いの目が向けられていることを本人に伝えなかったが、鱗形屋が先に彼を裏切ったのだから、そんな義理もないだろう。

 けれど、蔦重は一瞬でもずるい考えを持った自分を許せず、せめて鱗形屋の失墜を無駄にすることなく活かそうとしている。その覚悟が最も現れていたのが、女郎屋や引手茶屋の親父たちに吉原が自前の本屋を持つ必要性を説く場面だ。

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