血の繋がりよりも、共に過ごした時間
今回の見所は”絵の価値”だ。
実は、希美は虻川達の実子ではなかった。
本当の娘はひかりであり、2人は同じ日に同じ病院で産まれるも、災害の混乱で取り違えが発生してしまったのである。
2人は展覧会を通じて仲良くなり、そこで真実を知ってしまうが、お互い育ての親を愛していた事もあり、現状のままで何も変わらない生活を過ごしていた。しかし星は2人の秘密に気付き、徹の実子であるひかりの絵が高く売れると考え全ての真実を公表しようとしていた。
ひかりは怒りこれまでに渡していた絵を持ち帰るも、星のお得意先で徹の大ファンだった加賀さゆり(小林さやか)が2人の口論を聞いてしまう。さゆりは、希美が徹の娘だと信じて彼女の絵を星から買っていたため、激昂して彼を殺害してしまった。
星もさゆりも、絵そのものに価値を見出していたのではなく、”虻川徹の娘”という点にのみ価値を感じてそれに拘っていた。何を描いたかではなく誰が描いたのかという部分に翻弄されるのは本質を見失っていると言っても過言では無い。
そんな中で本質を見出していたのは、徹の妻・洋子(荻野友里)であった。彼女は、取り違えの事実を知らずにDNA鑑定の結果が出ても、希美が犯人な訳がないと訴えかけ、実子ではないと知っても、自分たちの夫婦の娘だと希美を強く抱きしめた。
大事なのは血の繋がりではなく、共に過ごした時間だと言えるだろう。
勿論、血縁のあるひかりとも、希美の友人として関係を繋ごうとする気持ちもある。
希美もひかりも血筋に関係なく、良い絵を描き、どこにいても自分は自分という確固たる意志を持っていて、そんな2人が眩しく見える1作だった。
また余談だが、今回希美とひかりを演じた松井愛莉と山谷花純は生まれた場所こそ違うものの、東北地方出身•血液型•誕生日(出生時刻は1分差)という作中顔負けの縁があり、今回偶然撮影中にそれが発覚したというのに驚きだ。