様々な価値観を揺さぶる『日本一の最低男』
一平たちの町は、どうやら代々続くお店が多いようだ。平蔵も工場を経営しており、一平に継がせたいと考えていた。
しかし一平の方は親が敷いたレールの上を歩きたくない。そんな反発心からテレビ局に就職した。その辺りからの確執だったとしたらなかなかの長さだ。しかし、もともと家族に対する平蔵の態度に一平は考えるところがあったようだ。つくづく、このドラマはさまざまな価値観を揺さぶってくるなあ、と思う。
平蔵が現役だったころは、専業主婦がまだ多い時代だ。それを一平は「母さんを閉じ込めていた」と表現した。男は外で仕事、女は家を守る。外で何かする時間があるなら、家のことをしろ、とまあ言葉は強いがそういう価値観だったのだろう。
父親は帰ってきても何もしない。「仕事で疲れて帰ってきてるんだ」と言う平蔵に、一平は「みんなが頑張らなくていい場所は、みんながちょっとずつ頑張って作るものなんだと気がついた」と言う。いやもうその通り…と言うしかない。
共働きだったとしてもこれは共通して言えることで、ハッとさせられた。でも、大半は、家族の誰かだけが頑張ってしまっているのが実態だ。
強いられているわけではない人もいる。陽菜が、自宅で最期を迎えなかったことについて「私でいる時間が欲しいな、って」「ずっとお母さんでいるのはきついから」と言っていた。つい、頑張ってしまう人もいる。それもまた真実で、誰にも責められないことだってある。