温和な彼女たちが罪に手を染めた理由

『フォレスト』第7話©ABCテレビ
『フォレスト』第7話©ABCテレビ

 孝子は気弱な部分もあるが温和な性格だ。鈴子のような陰険な女性ではないだろう。そんな彼女が“娘を奪われたうらみ” “我が子を守るという使命感”から毒の混入という罪を犯した。さらに、過去の秘密を隠し続けるために、無関係であるはずの塔子の命まで奪った。

 純の母・茜(黒沢あかね)も孝子と同様だ。彼女も経済力はなく、夫の借金を抱えていたものの、子どもたちと仲睦まじく暮らしていた。しかし、彼女はお金と引き換えに次男・涼介をあきらめる決断を強いられた。とはいえ、茜も息子をあきらめきれず、葉山(堀部圭亮)やその陰に潜むブランフォレストに復讐を企てる事態へと発展していった。

 茜と孝子は強者に抑され、弱みにつけこまれた“被害者”だった。しかし、最終的に、2人は無関係な人の命を奪った“加害者”になった。

 孝子も茜も社会的に弱い立場におかれているが、それゆえに苦渋の決断を強いられ、犯罪に手を染めたともいえる。

 2人は甲斐性がある夫と結婚していれば、鈴子のように自力で稼ぐ力があれば、あるいは社会から適切なサポートを受けられれば、塔子と中西精肉店の店主・宏樹(吉田ウーロン太)は幸せな家庭を築いていたかもしれない。

 鈴子は親族の心を踏みにじるだけでなく、会社経営においても裏帳簿など不正をはたらいていた。しかし、彼女は人を自らの手で殺めてはいない。一方、社会の片隅で誰も傷つけずに暮らしていたはずの茜と孝子は難が重なり、人の命を奪うという“何よりも重い罪”を犯した。

 茜と孝子が人様の命を奪う事態に陥るところに、本作における社会への問題提起があると考えている。貧困、格差、片親、孤立といった社会問題が見出せるからだ。

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