究極の“母親の愛”
茜を演じた黒沢と孝子を演じたふせの圧倒的な存在感により、社会的に弱い立場にある母親の悲痛が悲しいほど強く作中に響いている。
茜を演じた黒沢は涼介を奪われた苦しみ、息子を諦めたことの後悔を全身で表現していた。茜の目はどこか虚ろで、現実逃避しているように見える。また、本作の後半以降は、“涼介を取り戻さなければならない”という責任感が全身からあふれていた。
一方、ふせが演じた孝子は気弱で、控えめな女性であるが、娘たちへの愛情深さ、母としての強さも感じられた。
また、筆者はふせの高い演技力によって、孝子にまんまとだまされた。鈴子を献身的に看護する姿や、遠慮がちな立ち振る舞いを見ていると、“鈴子をなんだかんだ愛しているのだろう” “孝子には罪を犯すほどの気概がない”と思ってしまった。
本作は「究極のラブサスペンス」といわれているが、この“ラブ”には楓と純(岩田剛典)の恋愛関係だけでなく、“母親の愛”も含まれると思う。