聴取の難しさを実感
かなりセンシティブな内容の通報に驚くが、同日に放送された119番指令室に密着する『エマージェンシーコール〜緊急通報指令室』(NHK)でも同様のケースがあった。
番組内でオペレーターが放った「この電話は絶対に離さない」「すべての人が幸せな生活をおくってほしい そういう思いでこの仕事をしている」という言葉。まさに、本作が誠実に紡いでいこうとしているリアルが、そこにはあった。
だが、通報者に寄り添うという働き方は、上杉にはピンとこない様子である。現場第一主義の彼にとって、通報は相手の気持ちに心を寄せるものではなく、次々と捌く作業のように感じているのだろう。
ジャンクコールにも救急車を出動させる指令管制員たちに、出動させられる側だった上杉が疑問を呈するのは、もっともなことなのかもしれない。けれど、消防隊員が現場で多くの命を救うように、指令管制員たちもまた、正解のない聴取と向き合いながら、電話で多くの命を繋いでいかなければならない。
上杉を司令課に推したのは、消防隊長である飯田慎吾(谷恭輔)だった。現場しか知らない上杉に、「現場だけが主役じゃない」ことを知ってもらおうとしていたのだ。そこには、慣れからくる過信をたしなめるというより、上杉の成長を期待する意味が込められているようにも思う。
そんななか、上杉が聴取の難しさを実感する出来事が訪れる。通信指令センターにかかってきた一本の電話。上杉が受け取ったのは、「社長が胸を刺された」という内容だった。緊急性を察知した上杉は住所を聞き出そうとするが、通報者はなかなか言い出そうとしない…。