今後は雪の家族にもフォーカスが当たる予感
一方、上杉に代わって対応した堂島は、質問に「はい」「いいえ」で答えてくださいと指示し、通報者になるべく喋らせることなく、巧みに状況を把握していく。
事件性がある場合、犯人が近くにいるかもしれないことを想定し、要救助者だけでなく、通報者の安全にも配慮しなければならない。聴取にマニュアルなんてものはなく、その一つ一つが本当に生ものなのだと痛感させられてしまう一例でもあった。
最後に描かれた妊娠中の妻をもつ夫からの通報では、痛みに耐える妻の叫び声と、雪の必死の声かけに、思わずこちらも力が入る。赤ちゃんが生まれるまでの息を呑む様子、産声を上げたときの安堵の様子…指令管制員たちの表情の機微から、状況や感情が流れ込むように伝わってきた。
指令管制員の仕事の尊さを知った上杉が、まるで別人のように思いを新たにしたことも、本エピソードのハイライトだろう。プライドや過信、焦燥から、衝撃、戸惑い、反省、命が繋がれる喜びまで。演じる酒井大成の繊細な演技により、上杉の成長が丁寧に映し出されていた。
チームのメンバーたちがそれぞれに抱える葛藤や問題が描かれ、今後は雪の家族にもフォーカスが当たりそう。雪の姉である小夏(蓮佛美沙子)が声を発することができなくなったきっかけ、雪が指令管制員になると告げたときに見せた暗い顔、頑なに雪を避ける理由など…。次回、語られることを心待ちにしたい。
(文・西本沙織)
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