薪(板垣李光人)が安心して眠れる日が来ますように…。
事件は無事に終息を迎え、雪子も一命を取りとめた。
それにしても、彼女が病院のベッドで寝ているそばで看病していたときでさえまったく名前を覚えられていなかった青木が、空港でキスシーンを迎えると予想した人がどれだけいたか。雪子の恋愛事情を心配していたスガちゃんもびっくりするだろうに。
ふたりの仲が急接近する一方で、いっそう心配になるのが薪の心情。爪の出血斑を見せる青木に怒りをぶつける薪は、かつて”秘密”を守るために命を落とした鈴木を見ているからこそ、彼がウイルスに感染してまで囮捜査を行おうとしたのが許せなかったのだろう。
実際には、爪の出血斑はネイルアートによる偽装だったものの、青木の覚悟は本物だった。愛する人のために命を賭さない青木は、薪にとって嫌でも鈴木の姿と重なる。そして、誰よりも聡いからこそ、身近な人の心の機微にも気づいてしまう。
回を重ねるごとに板垣李光人は、薪剛にしか見えなくなっている。青木と雪子の関係に思いを巡らす姿も、眠っている間に”秘密”を漏らしていないかと動揺する姿も、映像で映し出される板垣は原作で茨の道を進んでいく薪の姿そのものだった。
青木が薪に対して何気なく放った「まるで泉鏡花の『外科室』ですよ」というセリフ。明治の文豪が綴る短編小説では、主人公の伯爵夫人が若き外科医への秘めた想いを漏らすまいと、麻酔を拒否して手術に臨むシーンが描かれる。
これから物語が進むたびに、間違いなく薪は苦しむことになるだろう。それでも、どうか安心して眠れる日々を送ってほしい。そう願ってやまない。
(文・ばやし)
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