「性欲=汚らわしい」という認識の弊害

©「マイ・ワンナイト・ルール」製作委員会
©「マイ・ワンナイト・ルール」製作委員会

 綾は「マイ・ワンナイト・ルール」というフィルターをかけることで自身の性欲を見ようとした。それは女性の性欲を顕在化させてはいけない空気感に加え、性欲そのものを“下品な感情”と捉えていたことも影響している。とはいえ、女性キャラだけではなく男性キャラも同様の感情を抱いていた点は本作の面白ポイントだ。

 堂島は離婚経験があり、元妻・叶美琴(酒井若菜)のことを想い過ぎるがあまり、美琴を性的な目で見る自分自身に嫌悪感を抱くようになる。その後、セックスレスとなり、最終的には結婚生活は終了。本気で女性を好きになることを恐れ、ワンナイトで性欲を満たすようになった。

 綾が悶々とした日々を送っていた理由も、堂島が離婚した理由も、いずれも性欲を汚らわしいものと考えていたことが大きい。「性欲=汚らわしい」というイメージがなければトラブルは回避できたように思う。それでは堂島と綾の恋物語も始まらなかった可能性は十二分に考えられる。

 それでも、性欲という欲求の捉え方を改めることにより、余計な不安やストレスを抱える人は減りそうだ。いろいろなシーンでのアップデートが進行しているが、性欲もその対象になれば生き辛さから解放される人は男女ともに結構いるのではないか。

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