乳がん患者・美和(松下由樹)の葛藤
第8話に登場した乳がん患者・美和(松下由樹)も、人生の大事な選択を前に葛藤していた。美和のがんはそこまで進行していなかったため、全摘か部分切除かを選択することができた。
ただ、部分切除と再建にはリスクが伴うため、息子の遼太郎(望月歩)は「命の方が大事なんだから」と美和に全摘を勧める。最初は、息子の言うとおりにしようと思っていたのだが、美和には交際中の恋人がおり、彼にもらったワンピースを着てプロポーズをしたいという夢があった。
「あの男のために再建するのかよ」と言った遼太郎の気持ちも分からなくはない。命の危険を冒してまですることなのか? とも思う。ただ、萌(小西桜子)が言うように、「美しくありたいと願うのに、年齢制限はない」。“美”というのは、時として生きる希望にもなるのだ。
きっと、これまでの美和なら遼太郎が嫌がることは選ばなかったはずだ。でも、遼太郎が社会人になって自立したとき、美和は自分が空っぽになってしまったような気持ちになったらしい。
そんなとき、恋人が「これからは、自分のために走ってもいいんだよ」と声をかけてくれたおかげで、「わたしはわたしのために生きてもいいんだ」と思えるようになった。
再建をする決断をしたことで、美和はちゃんと子離れをすることができたのだと思う。ずっと反対していた遼太郎が、手術後に「母さんは、母さんを卒業です」と言いながら花束を渡し、美和の恋人に「母さんを泣かしたら、マジでぶっ飛ばすからな」と笑いかけていたのも良かった。
彼も彼で、手術までの期間に親離れをするための準備をしていたのだろう。