発話が困難なときは「NET119緊急通報システム」を
救助隊が近くに来ても、小夏は「助けて」と発せられない。それでも気づいてもらわなければと、滑り落ちた山道を泥だらけになりながら登ろうとする小夏。声が聞こえるのに届かないつらさ、もどかしさに、心がきゅっと締め付けられる。
きっと、小夏がこのとき思い出していたのは、子どもの頃の火事の記憶だろう。雪を助けたかったのに動くことができなかった苦しい記憶は、小夏の声を失わせた。その声が時をかけて男の子を救うために戻ってきたときには、なんとも言えない感動で胸がいっぱいになる。
かすれて上手くカタチにならない声、絞り出すように放った「助けてください」、そしてがむしゃらに叫び続ける「ここにいます!」。小夏を演じる蓮佛美沙子のその声のグラデーションは、息を呑むほど迫真…。雪の言葉が小夏の背中を押した姉妹の絆にも、込み上げてくるものがあった。
発話が困難な場合、1つの手段として「NET119緊急通報システム」がある。アクセスすれば画面操作での通報や、チャット機能での状況説明も可能に。ただ、事前登録が必要であり、周知もまだ十分ではない様子…。本作が、その橋渡しになることを願わずにはいられない。
第8話では、雪と小夏の過去にもう少し踏み込んでいく。また、主任・堂島信一(佐藤浩市)の進行する病状も気になるところ。次週も、一瞬たりとも見逃せない。
(文・西本沙織)
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