薪(板垣李光人)のずば抜けた監察眼

『秘密~THE TOP SECRET~』第6話©カンテレ
『秘密~THE TOP SECRET~』第6話©カンテレ

 カフェで雪子と仲睦まじげに話すのは、彼女の昔からの友人である浜田葵(藤間爽子)。彼女は結婚式の招待状を手に持って、雪子へ会いに訪れていた。

 そこに突然、音もなく現れた薪は、初対面の葵に対してためらうことなく、彼女が隠していた秘密を口にする。葵の首元には、誰かに殴られた痣があったのだ。

 雪子が憤慨するのも無理はないほどデリカシーのない言い方ではあったものの、薪の監察眼は作中においても群を抜いていることが、あらためて視聴者にも伝わるシーンだった。

 そして、青木がひとりで捜査していた屍蝋化死体からは、新たな事実が明らかになる。なんと死体の身元は葵の父親であり、ナイフで彼を刺したのもまた、幼き頃の葵だった。

 彼女のもとにいち早く駆けつけようとする薪に対して、咄嗟に雪子は「(当時は)子どもだった」と葵を庇おうとする。しかし、薪は雪子に対して「頭が良いのに想像力がない」と容赦なく言い放つ。

 そもそも20年前の遺体の脳を見るよう第九に進言したのは雪子だった。本来は土から掘り起こされることなく、闇に葬られるはずだった罪。屍蝋化死体の脳に秘められた秘密を暴くことによって、封じ込められた悲劇が白日のもとに晒される可能性について、雪子はどこまで想像できていただろうか。

 薪は事件の顛末を予見して、彼女のもとへただひとり駆けつけようとしていた。真犯人として捕まえるためでなく、彼女がこれ以上、罪を犯さないように。

 雪子に対しては辛辣な言葉を投げかけていたが、薪が誰よりも自分に厳しいことは、これまでの言動を見ていればわかるはず。そして、彼がどれだけ人の秘密をのぞき見ることに苦悩しながら、MRI捜査で判明する真実に向き合っているのかを。

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