「最後のチャンス」は贖罪

『東京サラダボウル』最終話 ©NHK
『東京サラダボウル』最終話 ©NHK

 罪を認めてと訴える鴻田に、阿川は「言葉が通じなくて困っている人たちを助けたくて、国際捜査係の刑事になった」と、事の経緯を話しはじめる。彼らの陥った闇を理解するために、彼らのなかに飛び込んだはずの阿川だったが、どんどん深みにはまっていった。

 “助けたい”という純粋な思いが、ボランティアの「これは人助け」「日本の治安を願うあんたが一番欲しい情報をあげられる」という言葉に絡め取られ、闇を理解するはずが、同じ闇に飲み込まれてしまった。

 人は弱い。流され、正義という大義名分を抱えたまま落ちて行った阿川は、保身のために有木野との関係をバラすと織田を脅迫し、結果的に死に追いやった。その罪とともに生きていくことが苦しかった、という阿川に同情はするが、やはり身勝手な言い分だと感じざるを得ない。

 織田はもう戻ってこないし、有木野をはじめとする周囲の人々を傷つけた。もちろん、阿川がボランティアに引き渡したという47人の不法滞在者それぞれにも、家族や大事な人がいたはずだ。そこから目を背けた阿川の罪は重い。

「最後のチャンス」を、阿川は贖罪に使った。そのおかげで居場所が特定され、ボランティアは逮捕される。

 その直前に、ボランティアによって首を切り裂かれた阿川は、鴻田の応急処置により、なんとか一命は取り留めた。動脈を直接つまむという必死の救命は、誰も死なせたくないという思いと、まだやることが残っているだろうという思いの表れだろう。

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