”ボランティア”は増殖し続けるーー。

『東京サラダボウル』最終話 ©NHK
『東京サラダボウル』最終話 ©NHK

 取り調べを担当した八柳(阿部進之介)が「君はボランティアか?」と尋ねると、ボランティアは「ボランティアの“一人”」だと答える。「僕以外にもたくさん、この街で生きてる」と。

 社会から居場所を奪われた人たちを食い物にしてきた悪人であると同時に、ボランティア自身もこぼれ落ちた人間だった。困っている人を助けるフリをして近づき、光の当たらない場所で物事を遂行させてきた。心に後ろめたさをもった危うい立場の人が存在する限り、“ボランティア”は残念ながら増殖し続ける。

 取り調べに立ち会っていた有木野は、ボランティアに「無理だとしても、探し続けるだけだ。俺たちはそう決めた」と宣言する。鴻田のいう「こぼれカスひーろーズ」が、いかに大事であるかという証左のような言葉だった。

 すべてを救えないから諦めるのではなく、せめて1人でも多く救えるようにもがくしかない。有木野の「決めた」には、そんな覚悟が含まれているように感じた。

 鴻田は本庁の国際犯罪対策課への異動の話を受け入れ、有木野と同じ職場で働くことに。並んで出勤する2人の背後を、白装束にフードを被った人物が歩く。新しい“ボランティア”だろうか。

 こんな連鎖は早々に断ち切られなければならないが、東京というサラダボウルを疾走する鴻田と有木野の姿をまた観られるのではないかと期待させられるラストシーンだった。

(文・あまのさき)

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