「神隠し」にあった住人はすべて同一人物

『問題物件』第8話©フジテレビ
『問題物件』第8話©フジテレビ

 これまで、木川は、隣の部屋の住人が舘石という女性をはじめ3人も失踪したのを見てきた。おまけに、木川はその3人それぞれからとても良くしてもらっており、飼い犬の「たまご」も懐いていた。

 実はこの3人の住人は同一人物。新興宗教「ギヤマンの鐘」の人間だ。しかし、追われる身。そんな彼女が姿を変え、木川の隣に住んでいたことにどんな企みが? と勘ぐってしまうが、別に悪事を働こうとしていたわけではない。

 むしろ逆。木川を守ろうとしていたのだ。それは、彼女が生き別れになった木川の母親だったから…。

 正体を明かすことはできないけれど、娘のそばにいたい、娘を見守りたい。そんな思いから、危険を冒しつつも木川の隣に住んでいた。姿を変えていたのは、「ギヤマンの鐘」の人間に見つかってしまっていたから。

 木川は生き別れになったはずの母がすぐそばにいたという事実に動揺し、拒否反応を示してしまうが、実は舘石はすでに亡くなっていた。ガンを患い余命幾ばくもないからこそ、娘のそばにいたい、と大胆な行動に出ていたのだ。

 そんな木川に犬頭が説いたのは、「無償の愛」について。何か見返りを求めるわけでもない。ただ、そばにいられるだけで幸せだという、母親の愛。それは犬が飼い主に向ける愛にも似ている、と。

 そう考えると、「無償の愛」は難しい。人間は心のどこかで見返りを求めてしまう。誰かを愛するだけでいい、と思いつつも、その愛に応えてほしい、と思ってしまう。ただ、木川の母親は違った。

 もうそばにいるだけで幸せだから、見返りなんていらなかったのだ…と思うけれど、きっと心のどこかでは娘に自分が母親だと気がついてほしい、愛を返してほしいと思っていたのではないか。

 ただ、犬は飼い主のそばにいるだけで幸せ――と犬頭は言う。そう思ってくれているのなら、人間としてはこれ以上に嬉しいことはないのだけれど。

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