各々が抱える“罪悪感”とは
この第7話は“罪悪感”が一つのテーマだったように思う。耕助はレストランで働いていた頃、元同期の池岡(伊島空)を見捨てたことへの罪悪感をずっと抱えたままだった。けれど、久しぶりに会ってみたら、レストランを辞めた後、料理教室の講師になった池岡は晴れやかな顔をしていた。
池岡は耕助のことを恨んでいなどいない。それどころか、パスタのテストの前日に朝方まで練習に付き合ってくれた耕助に感謝していた。そのことを耕助はすっかり忘れていたのだ。
その記憶が入る隙もないほどに、耕助の“見捨ててしまった”という認識が頭を支配していたのだろう。それくらい誰かを傷つけた記憶はずっと残るし、自分にも跳ね返ってくる。でも、案外相手は気にしていなかったりして、それがとてもリアルだった。
一方、葵(草川拓弥)は別れた妻・京子(北村優衣)と再会する。葵が彼女に抱いていた罪悪感は、他の2人とはベクトルが違う。優太や耕助の場合は、「自分で部屋を片付けられないこと」「池岡を見捨ててしまったこと」といった行為に対する罪悪感だが、葵の場合は、「自分が男である」という自分の存在そのものに対する罪悪感だ。
夫婦別姓が認められていない日本では、結婚したら、どちらかが名字を変えなければいけない。京子は葵の名字になった。でも、葵は特段、自分の名字にこだわりがあるわけではない。
それなのに話し合わなかったのは、「結婚したら妻が夫の名字になるもの」という思い込みがあったから。京子もそれを分かっていたから、特に話し合いもせずに名字を変えたのだろう。