薪(板垣李光人)の息を呑むほどの美しさ

『秘密~THE TOP SECRET~』第7話©カンテレ
『秘密~THE TOP SECRET~』第7話©カンテレ

 ほかにも、本エピソードはキャスト陣の演技が光った回だった。薪が傷つけられた際に、岡部(高橋努)が我を忘れて千堂外務大臣に向かっていく姿を見て、そのギャップに心掴まれた人も多いのではないだろうか。

 ただ、特筆すべきは、薪を演じる板垣李光人の憑依っぷり。第1話では幼さも垣間見えた薪だったが、回を重ねるごとに室長としての堂々たる姿を披露している。

 逆上して暴力を行使した千堂に対して、髪を乱れさせながら「以前は国交と国際世論を重視しましたが、今回はどちらを優先させるおつもりですか」と言い放つ薪の姿は、息を呑むほどの美しさだった。

 さらに、外務省へと自ら赴いて、大臣に啖呵を切る場面。薪の切れ味鋭すぎる言葉に対して「お前、そんな物言いでよく警視正にまでなれたもんだな」と千堂が言い返すと、「いいえ。“だから”まだ警視正なんです」と皮肉たっぷりに答える。食い気味に半拍早くセリフに入る板垣の演技もすばらしい。

 薪はあまりにも重い十字架を一身に抱え込み、死者の秘密をのぞき見ることへの葛藤を心に抑え込んで、凛とした振る舞いで捜査員を率いる。威厳のある言動とは裏腹に、彼が虚勢を張って表に出さない柔らかい部分さえも、板垣は繊細に表現しているように思う。

 薪の強さと弱さの両面を内在させる彼の芝居は、まさに原作で描かれている薪の姿そのものだった。

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