木山の感受性スイッチを押した優太(井之脇海)

『晩餐ブルース』第8話 ©「晩餐ブルース」製作委員会
『晩餐ブルース』第8話 ©「晩餐ブルース」製作委員会

 もしかしたら木山も最初はがむしゃらにやっていたけど、現実を思い知ってやり方を変えたのかもしれない。幸か不幸か、木山はパフォーマンスが得意だった。

 他人の手柄を横取りして評価を得るようなところもあるけれど、堂々としているから、おそらくあまり気づかれないだろうし、傲慢な態度も同性の後輩から見るとカリスマ性があってかっこよく映るのだろう。

 木山曰く、コツは「感受性のスイッチを切ること」だという。そうすれば、他人に対して怒りや悲しみが湧くこともない。可哀想とか申し訳ないとか、そういう同情や罪悪感も抱くことなく、自分の駒として利用することができる。

 でもその結果、木山は王様になったつもりが、王様は王様でも“裸の王様”になっていた。自分が何をしたって、周りは褒めてくれる。その時は気分がいいかもしれないけれど、誰とも本音を交わせることができない、自分が間違っていたとしても誰も指摘してくれないという意味では孤独だ。

 木山が感受性のスイッチを切っているはずなのに技術チームと揉めたのは、「見栄も嘘もいらない。食パン一斤もらったら分け合えるような相手、木山さんにもいませんか?」と優太に聞かれた時、自分が孤独ということに初めて気づいたからではないだろうか。

 自分にはそういう相手が一人もいない。その虚しさが、木山の感受性スイッチをオンにしたのだろう。

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