今度は優太が心を休める時?
だけど、木山はまだ本当の意味で孤独ではなかった。優太のように「昔の木山さん、好きでした」と率直な気持ちを伝えてくれる後輩がいる。自分から歩み寄れば、その想いに応えてくれる人は他にもいた。
優太に諭され、上野から自分の企画に対する正直な意見をもらうことにした木山。どちらにも「つまらない」と言われてしまうが、ちっとも良いと思っていないのによいしょされるよりはよっぽどいい。
ただ、木山の感受性のスイッチは長いことオフの状態で放置されていたために錆びついている。上野にやりたいことを聞かれるも、「こういうものが作りたいとか、正直俺ないよ。だから世間が求めてるものを考えてみただけ」という木山。それはある意味、評価されることだけを基準にした弊害かもしれない。
そこは優太も同じだった。企画を考え出したものの、自分のやりたいことは思いつかず、流行りのワードを入れ込んでみるが、しっくりこない。気分転換に出かけた先でゆったりと川を眺めていた時、ふと「疲れたなぁ」という言葉がついて出る。
優太が自分でも驚いて「えっ」と言ったところでEDに入るラストは、なんだかホラーテイストだった。優太はきっと、とっくに限界だったのだ。第1話の冒頭で、スマホのTodoリストにやるべきことを打ち込みながら、不意に涙が溢れた時から。
でも、あの時はまだ涙の正体に気づいていなかった。「疲れた」という自分の状態が分かっただけでも、前に進んでいるのではないだろうか。
一方、耕助(金子大地)は高齢の夫婦が営む定食屋を引き継ぐことを決意する。ようやくやりたいことが見えたのは、ゆっくり心を休めたから。今度は優太が心を休める時がきたのかもしれない。
(文・苫とり子)
水ドラ25「晩餐ブルース」
テレ東ほか 毎週水曜 深夜1:00~深夜1:30
各話放送終了後から、動画配信サービス「U-NEXT」「TELASA」「J:COM STREAM」「milplus」「Prime Video」 にて順次見放題配信
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