それぞれの家族の描き方が胸に響いた

『御上先生』第9話 ©TBS
『御上先生』第9話 ©TBS

 第9話でいえば、それぞれの家族の描き方がぐっと胸に響いた。

 第8話で「助けて」とSOSを求めていた富永(蒔田彩珠)。圧倒的なコミュニケーション能力と気配りで、3年2組の窮地をいくつも救ってきた彼女だが、家庭環境に悩みを抱えていた。それが障害を抱えた弟との関係であり、自分がいないほうが家族にとってプラスなのではと思い詰めていたのだった。

 富永の苦しみをしかと受け止めた御上。余計な慰めをかけることなく、「よく話してくれた」と答える御上はやはりコミュニケーションの達人だ。

 ただ、結局のところ家族間での問題を解決するには対話しかない。時間がいい薬になることもあるだろうが、やはり当事者間での会話こそがベストにして最適解であることは誰もが知っている。

 とはいえ、それがわかっていてもすぐには動き出すのが難しいのが人間というもの。だからこそ、御上は身を持って母親との対話を彼女と次元賢太(窪塚愛流)に見せたのではないだろうか。

 2人を連れて母のいる老人ホームへと訪れた御上。御上の母親は、彼のことをかつて抗議のために自死を選んだ兄・宏太(新原泰佑)だと認識するようになっていた。御上はこれまでその状況を甘んじて受け入れていたわけだが、この日は粘り強く自分が孝であることを語りかけた。

 御上の言う通り、この日は御上のことを孝と認識できていたとしても、明日にはまた御上のことを兄・宏太と見てしまうかもしれない。それでも、自分の気持ちをきちんと相手に伝えることに意味がある。

1 2 3
error: Content is protected !!