有害な男性性を乗り越える

『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』第7話©フジテレビ
『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』第7話©フジテレビ

―――香取慎吾さん、志尊淳さんのキャスティングの経緯を教えてください。

「主人公の大森一平については、選挙のためにホームドラマを演じようと企む“陰”の部分と、本当はいい人なんじゃないか?と思わせる“陽”の部分の両方を演じられる人がいいな、と思って。

香取さんはその二面性を演じ分けられますし、社会的なテーマを背負っても重くなり過ぎないバランス感がすごくいいんですよね。今回の題材はわりと踏み込んでいくと、重い題材になるので、そこをある種ポップに見せていけているのは、香取さんのキャラクター力が大きいと思います。

志尊さんに関しては香取さんと対になる役どころです。ドラマの大きなテーマの一つが有害な男性性をどう乗り越えるか、ということは意識して作っています。昭和的な価値観でマッチョな一平と、対極にいる志尊さん演じる正助。令和の男性像を体現するキャラクターとして必要不可欠でした。志尊さんは1本1本の作品にかける熱量が高く、とても信頼できる方だと思い、オファーさせて頂きました。今回も子役のオーディションにも立ち会って、相手役もやってくださって。共に作品を背負える同志だと個人的には思っています」

―――有害な男性性を乗り越える、というワードはインパクトがありますね。

「1話の中でも描いたのですが、家族の誰かが犠牲になっているから、主人公の一平は仕事だけを24時間できていたわけで。僕も子育て中で、妻は時短で働いているんですけど、僕の撮影があるときは妻はワンオペになってしまうので、かなりの負担をかけています。だから、自分の中で後ろめたさもあるんです。なので、誰かの犠牲の上に成り立っている社会はやっぱりおかしいとずっと思っていて、ただ目の前の仕事も成立させないといけないし、本当は育児と仕事が当たり前に両立できるやり方を模索した方がいいと思うのですが、なかなか自分自身も十分にできているとは言い難いです。そうした点についてもドラマの中で描かせていただきました」

―――香取さんと志尊さんが実際に演じられているのを見られていかがですか。

「主人公の一平は香取さんにしか演じられない役だとずっと思っています。現場の空気をいつもあたたかくしてくれる座長で、子役2人を含めて香取さんを中心に現場がまとまるんです。穏やかな現場で最後までたどり着けたのは香取さんのおかげですね。演技の面でも、“光と影”の二面性を巧みに表現してくださっています。

あと、香取さんご本人から撮影がすべて終わってからお聞きしたのですが、例えば7話の祭りのシーンは両津勘吉のイメージで、9話の区長選に出馬しますと宣言するシーンは『新選組!』(2004、NHK総合)の近藤勇のイメージで演じたということをおっしゃっていたので、これまでの引き出し含めて全てを出し切ってくださったんだと思います。志尊さんに関しては、初のシングルファーザー役をとても楽しんで取り組んでくださり、想像以上に香取さんとのお芝居のバランスを考えて演じられていました。そのおかげで、徐々に変化していく2人の関係性が大きな見どころになったんじゃないかなと思っています」

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