止まっていた父と息子の時間が動き出す
そんな中、松風(松山ケンイチ)は赤沢に繋がるツテを求め、福岡の実家へ。母親(宮崎美子)と会うのは10年以上ぶりだ。
元夫の久世(篠井英介)が窃盗の疑いで警察を懲戒免職になった後、女手一つで松風を立派に育て上げた母親。その清廉潔白な生き方が、松風には時々息苦しく感じられるのかもしれない。
本当に真っ当な母親を前にすると、自分は真っ当な人間を装っているだけの紛い物であるということを突きつけられるから、今まで会うのを避けてきたのだろう。
母親と会った後、心麦と落ち合った松風は「すごいな、あの人は。それに比べてさ、俺はずっとグラグラしてんな」と溢す。そんな松風に「すごく真っ当です。人としてグラグラするって」と声をかけた心麦。その言葉にきっと松風は救われたのではないだろうか。
そして東京に戻った後、松風は母親から教えてもらった連絡先を頼りに久世に会いに行く。現在は知り合いの会社で警備の仕事をしているという久世。久しぶりの再会でしばらくは気まずい雰囲気が流れていたが、松風から赤沢の名前が出た瞬間に久世の目の色が変わる。
久世は松風に「赤沢には気をつけろ」と忠告。赤沢の強引な捜査を危険視していた久世は警察上層部にも相談していたという。赤沢はそんな久世が邪魔だったから、窃盗の罪を着せたのかもしれない。久世は自分の身の潔白を証明するために戦わなかったことに対する後悔を口にした。
一方の松風も、心麦のように父親を信じられなかったことを後悔する。「ごめん、信じてやれなくて」と涙ながらに謝罪する松風はまるで子供のよう。そんな松風をなだめるかのように、涙を流しながらも「俺はようやく救われたよ」と優しい笑顔で応じる久世。
25年もの間、止まっていた父と息子の時間が動き出すシーンは松山ケンイチと篠井英介の名演によって感動的なものとなった。