自分にも周りにも優しい気持ちを持てない辛さ
一方、耕助は近所の定食屋を今のオーナーから引き継ぐにあたって、楽しそうに準備を進めている。
耕助は有名レストランの料理人として働いていたが、挫折し、しばらく休職していた。優太はそのことを知っているし、長いトンネルから抜けた友人の再出発を本当は一緒に喜びたいはずだ。だが、自分が下降気味なときに、上昇気流に乗っている人を見るのは得てして辛いもの。その相手が誰であっても。
そんな自分が嫌になって、晩活にも若干の居心地の悪さを感じてしまう優太があまりにもリアルで心が苦しくなった。でも、その気持ちを一番理解できるのは耕助なのではないだろうか。
キャパオーバーで自分にも周りにも優しい気持ちを持てない辛さを、耕助は誰よりも知っている。同時に、渦中にいる時は周りのアドバイスも素直に聞き入れることができないのも分かっている。
自分がキャパオーバーなことを認めてしまったら本当にダメになってしまう気がして、目を背けることしかできない気持ちも。