ドラマ『最後から二番目の恋』考察&評価レビュー。脚本家・岡田惠和が紡ぐ名言とは? 見どころを第1作目から振り返る

text by 小林久乃

2025年4月期の月9ドラマとして、小泉今日子と中井貴一のダブル主演『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)が放送される。今回は、新作の放送に合わせて、2012年放送の第1作目の見どころを振り返る。(文・小林久乃)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:小林久乃】
出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーション業などを生業とする、正々堂々の独身。最新情報はこちら

主人公・吉野千明(小泉今日子)の圧倒的な魅力

小泉今日子
小泉今日子【Getty Images】

 4月からの毎週月曜21時。どうやら私はトレンディドラマ放送時代のOLのごとく、テレビに釘付けになるらしい。理由は『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)が始まるからだ。タイトルの頭に“続”とふたつもついているのは、今回が第3シリーズの証(あかし)。平成後期に女性の働き方、立ち位置、心意気を代弁したような女性・吉野千明がまた再び戻ってくる。このコラムの原稿料以外、なんのリベートも発生はしないが、作品の熱血ファンとしてこれまでのシリーズがもたらしてくれた、ファンキーな面白さを振り返ってみようと思う。

 まずは作品の原点である、2012年放送の『最後から二番目の恋』。大手テレビ局に勤務する吉野千明(小泉今日子)は、独身のドラマプロデューサー。体も、環境も、心も変わり目の時期に差し掛かった45歳だ。とある日。独身女性にありがち……と言っては失礼だけど、当時の流行もあって、東京都内のマンションから鎌倉市の古民家へ移住する千明。引越し先の隣家には鎌倉市役所に勤務する長倉和平(中井貴一)と、その家族が賑やかに暮らしており、都会にはなかったご近所コミュニティーを深めていく。近所には海、そして最後になるのかもしれない、新しい恋の予感。理想的な移住生活が始まった……というのが、簡単なあらすじである。

 上記、第1シリーズの放送時のインパクトと共感は大きかった。まだ皆がガラケーを使い、飲食店で喫煙が可能だった時代の話だ。吉野千明という女性はとても気っ風の良い女性で、中間管理職としてストレスを抱えながらも、言い訳はしない、どんな時でも自分が責任を取るというスタンスを貫いていた。動画配信で第1シリーズを見るのなら、この千明の言動を見逃してはならない。

 自分の上司を思い起こそう。よく分からない御託や言い訳を、ブッフェのように並べられ、こちらの思考回路を困惑させることしかしていない。社内の肩書きなんて一歩外に出たら何の効力も持たないのに、メールや、飲み会で自慢を吹かす。これが現実。でもそんな様子は微塵も見せず、千明は「いいドラマを作ろう!」という一心で職場にいる先輩だ。どこまでも後輩やスタッフたちを信じているのが伝わってくる。

 おまけに彼女は令和にはそぐわないと言われそうだが、気持ち良いほど酒を飲む。友人とも和平たちとも、毎日おいしそうに飲んでいる。たとえ二日酔いになろうとも、そのことは言い訳にすることがない。よく職場にいますよね「今日、二日酔いで」と、同情を引きたいのか、昨夜楽しかった自慢をしたいのか分からない同僚や上司が。でもそんなセリフは吉野千明辞書には存在しない。飲んでも飲まれない。時折浮かんでくる寂しさは、自分で何とか揉み消す。

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