大河ドラマ『べらぼう』第12話考察&感想。まさに“神回”…横浜流星”蔦重”の天才的手腕とは? 祭りの幸せな夢に浸るワケ【ネタバレ】

text by 苫とり子

横浜流星主演の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)が現在放送中。貸本屋からはじまり「江戸のメディア王」にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く。今回は、第12話の物語を振り返るレビューをお届けする。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

俄祭りの覇権を巡って吉原内は真っ二つ

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第12話 ©NHK
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第12話 ©NHK

 吉原で1ヶ月に渡って行われる一大イベント・俄(にわか)祭りの模様が描かれた『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第12話。神様が訪れるという祭りの力が人と人との間にある壁を取っ払う、まさに“神回”だった。

 浄瑠璃の人気大夫・午之助(寛一郎)から祭りへの参加の約束を取り付けた蔦重(横浜流星)。さらには午之助の二代目・富本豊前太夫襲名にも一役買ったことで信頼を得て、直伝の富本正本も「耕書堂」から出版させてもらえることになった。

 結果、富本本を求めて普段はあまり吉原に来ない女性たちも訪れるようになるが、蔦屋が思っていたよりは客足が少ない。理由は色々とあるが、その1つが商品の少なさだ。

 市中の本は扱えないことになっているため、耕書堂の棚に並んでいるのは蔦屋が手がけた吉原細見と「青楼美人合姿鏡」と富本正本の3冊のみ。これではせっかく客が来ても、リピートは望めない。

 そんな中、俄祭りの覇権を巡って、かねてより折り合いの悪かった若木屋(本宮泰風)と大文字屋(伊藤淳史)が真っ向から対立。若木屋は西村屋(西村まさ彦)と手を組み、祭りに合わせて錦絵を売り出すというではないか。大文字屋も急いで対抗策を考え始め、吉原内は真っ二つに割れる。

 そんな様子を見て、俄祭りの内情を面白おかしく書いた本を作れば、売れるのではないかと考えた蔦重。そこで平賀源内(安田顕)に執筆を依頼するが、オランダからの輸入品である摩擦起電機「エレキテル」の復元を成功させた源内は多忙を極めていた。

 代わりに源内は青本の人気作家・朋誠堂喜三二に頼んでみてはどうかと蔦重にアドバイスを送る。

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