若木屋と大文字屋の雀踊り対決が目玉に
こうして約束を反故にされてしまった蔦重だが、それ以上無理にどうにかしようとしないところが彼の偉いところ。「鱗の旦那の手前、やりにくかったか」と平沢の気持ちを慮り、さっと手を引いて発想を転換させる。
幸いにも、西村屋が出版した礒田湖龍斎(鉄拳)の錦絵「青楼俄狂言」は大評判で、俄祭りが盛り上がるのは確実。だったら、その盛り上がりに乗じて、訪れた客に耕書堂の名前だけでも覚えて帰ってもらおうと蔦重は前向きに考える。
さらには湖龍斎に嫉妬をあらわにしている勝川春章(前野朋哉)を焚きつける形で、俄の絵を墨摺りの冊子にした「明月余情」を祭りの期間中に売り出すことにした蔦重。その序文の執筆を、ふらりと耕書堂に現れた平沢にお願いする。
平沢は約束を反故にした罪悪感もあるのか、あっさりと引き受けてくれた。もしも蔦重が平沢に青本の執筆を無理やりお願いしていたら、せっかくの良好な関係にヒビが入ってしまったかもしれない。あの時、一歩引いたからこそ、再びチャンスが巡ってきたのだ。
さて、俄祭りの方はといえば、富本豊前太夫の浄瑠璃や女郎見習いの禿たちによる女歌舞伎で大盛況となった。もう一つの目玉となったのが、若木屋と大文字屋による雀踊り対決。
最初の頃はバチバチと火花を散らしていたが、1ヶ月もの間、毎日踊りを続けた結果、2人の間には不思議な絆が生まれていた。最終日には互いの健闘を称え合い、手に持っていた笠と扇子を交換。仲良く並んで踊り出し、観客も巻き込んで一緒に祭りを盛り上げる。