作品も人も”消費”される状況だからこそ
台湾にこんなことわざがある。「休息是為了走更長遠的路」。
“一休みはより長い旅のため”という意味だ。優太は今の仕事が嫌になったわけじゃない。
ドラマディレクターになるという夢を叶えるため、夢を叶えてからはそのポジションを維持するため、今までひたすら走り続けてきた。でも、人は永遠に走り続けることはできない。
仮に22歳から65歳まで働くとしたら43年間。優太が30歳くらいだったとしても、あと半分以上は残っている。その残りの道を自分はどのペースで進むのか、どのルートを通るのかはまだわからない。けれど、今の優太には一旦立ち止まって、息を整える時間が必要だった。
優太に休職の旨を伝えられた部長(諏訪雅)は「作品も人も消費されちゃってるんだよな。今の状況が良くないことは分かってるんだけど、申し訳ない、どうしようもできなくて」と謝る。
その丁寧に休職届を折りたたんで、ぎゅっと手で握りしめる仕草に部長の「かたち」が見えた気がして、なんだか泣きそうになった。