子育ては“ブラック業務”

『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』第2話©TBS
『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』第2話©TBS

 仕事と比較しても子育ては“ブラック”な業務だ。理由もわからない子供の行動をずっと注視しなければならず、大きくなるまで基本的には言葉も通じず、賃金が発生するわけでもない。毎日、同じことを繰り返していると錯覚してしまう作業は、成果が目に見える仕事の世界で生きてきた中谷には苦行とさえ感じられただろう。

 仕事のタスクのように子育てを進めていた中谷にとって、家事と子育てだけをすればいい詩穂はどれだけ気楽に見えていたのだろうか。そうした思考が頭にあるから、中谷は自分の考えを押し付けペースに巻き込んでいってしまうのだと思う。

 いきなり水族館へ連れて行かれた詩穂からすれば、家族で一緒に行くという予定を崩され、怒るか関係を切ってもおかしくはない。だが、第1話で見せたように彼女は人間関係の達人だった。中谷をたしなめた「私には私のペースがあるんです」というのは平易な言葉だが、“こうあるべき”という考えに縛られていた彼には刺さっていたはず。人にはそれぞれ進みやすいテンポというものがあり、子育てだってその例外ではないのだ。

 その後、子供の急な発熱もあり、協力を通して距離を少しだけ縮めた2人。友達ではないが、同じ目標を持つ同僚としては互いに頼もしい存在だろう。

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