青木「あなたがご自分を好きになってあげてください」
それでも薪は貝沼に屈することなく、「もう第九から殉職者は出さない」と瀧本を強く説得する。しかし、瀧本はいつの間にか侵入していたクオリア教会の刺客に拳銃で撃たれてしまう。
最後に自らの脳を打ち抜いてほしいと懇願する瀧本の脳裏に浮かぶのは、宗教2世として育った幼い頃の記憶。死の間際、瀧本は幸せだった頃の家族との時間に手を伸ばす。走馬灯のように流れていく思い出は、誰にも見られたくない彼の“秘密”でもあった。
鈴木が亡くなったときと同じように、目の前で第九の人間を失った薪は、駆けつけた青木に「ここを撃ってくれ」と自らの心臓を指差す。それでも、泣き叫びながら銃を乱射する薪に対して、青木は怯むことなく駆け寄り、「そんなふうに自分を追いつめないでください。責任を一人占めしないでください」と抱きしめる。
青木の愛に溢れる言葉は、貝沼の愛憎入り混じった想いと対比されているようにも感じた。自らの意のままに相手を操ろうとする貝沼に対して、青木はただただ薪の生き様を肯定する。
「もうそろそろあなたもご自分を赦してあげてください。あなたがご自分を好きになってあげてください」と語りかける青木。その姿に鈴木の面影は一才ない。あの世界で薪のことを思って言葉を紡ぐ青木を、最後まで中島裕翔は見事に演じ分けてくれた。