続編を期待する視聴者の「願い」
薪と青木だけでなく、岡部(高橋努)を始めとする第九の絆も最終話では描かれていた。死ぬ危険さえある囮捜査に小池(阿佐辰美)と宇野(森田想)が参戦したことはもちろん、岡部が警察庁長官に楯突いてでも発さずにはいられなかった言葉が、第九の捜査員たちの想いを代弁する。
「恐れながら我々第九の捜査員が、人の脳を見て個人の秘密を侵害し続けるというこの捜査を、己の倫理観や犯罪者の脳の恐怖や残酷さに押しつぶされそうになりながらも、それでも誇りを持って続けて来れたのは、薪室長だったからです」
捜査員たちがこっぴどく叱られる姿は、視聴者でさえ何度も目撃している。それでも、第九のメンバーが誰ひとり歩みを止めなかったのは、薪が誰よりも誠実に人の“秘密”と向き合い、常に矢面に立って先頭を歩いていたからだ。
薪もまた、事件の重要証拠となるはずだった瀧本の脳を破壊する。薪は事件関係者のMRI映像ではなく、部下の大切な記憶として扱ったのだ。彼の尊厳と秘密を守るために。
事件の責任をとって、第九を去ることになった薪は青木に「いつまでも捜査員が命や私生活を犠牲にする第九ではいけないんだ」と打ち明ける。誰よりも自分が強く望んでいることを他人に与えようとする薪に、青木でなくても涙ぐんでしまう。
このドラマは必要不可欠なピースが集まった今の時代だからこそ、一連の映像として再現できた物語だったように思う。そして、さまざまな要素が存在するなかでも、板垣李光人と中島裕翔の「かつてないほど切ないバディ」が作品で欠かせない役割を果たしたことは言うまでもない。
最後に薪が青木に告げた言葉は、物語の続編を期待する視聴者の「願い」でもあった。
(文・ばやし)
【関連記事】
【写真】板垣李光人&中島裕翔が尊い…貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『秘密~THE TOP SECRET』劇中カット一覧
ドラマ『秘密』第10話考察&感想。画面越しでも苦しい…シリアスの中でも中島裕翔”青木”に思わず笑ってしまったワケ【ネタバレ】
ドラマ『秘密』第9話考察&感想。中島裕翔”青木”の絶望感が忘れられない…観る人の心にも心情が流れ込む芝居の魅力とは?【ネタバレ】
【了】