広瀬アリス演じる主人公の新しさ
説教のテーマとして「いじめといじりの違い」を取り上げるのは、ありふれている。
時代は変化し続け、『御上先生』のような過去の紋切り型からの脱却を試みる先駆的な作品が毎クール生まれていることに呼応して、視聴者も新しいものを求める傾向にある。それだけに、どこかで見たことや聞いたことがあることをテーマに説教をしていくのは、”古臭い”と受け取られてしまうリスクがある。
しかし、そんなことはこのドラマの作り手も百も承知だろう。今の時代に、あえて古いテーマを取り上げる姿勢は、保守ではなくむしろ挑戦だ。制作陣の真意は、回を追うごとに明らかになるに違いない。
そのカギともいえそうなのが、主人公の静だ。消極的な意思で学校の問題を解決する静の姿は、前述したように、従来の学園ドラマの主人公像とは違うものを感じる。
本人は頭に血が上りやすいと自覚しているが、何でもかんでも首を突っ込むわけでもなく、最後の許せないラインを越えた瞬間に“説教モード”へと入る。事前に説教の文言をメモするなど、「完璧な人格者」ではない教師像はドラマとして真新しく感じる。静の現代的な在り様は、実際の現場の先生も案外そういうものなのかも、という思いにもさせられた。
モヤッとを散々ためてから、スッキリへ移っていく作品となっており、いかにもお笑い畑出身で、第3のバナナマンとも称される放送作家オークラらしい脚本とも言える。
作品の性質上、基本的な流れは踏襲していくとみられるが、となると、いかに飽きさせずに“神説教”で視聴者を気持ちよくさせられるのかが、肝となるはずだ。オークラの手腕に期待したい。
(文・まっつ)
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