人生は死ぬまで敗者復活戦

　人間が自分に直接的な害がない人を厳しく咎めるのは、普通に生きることの難しさゆえだろう。

　“人生を変えたいなら、自分で行動を起こさなければ始まらない”とよくいわれている。しかし、ノノのように人生大逆転をねらって動いたことで、自身をとりまく状況がさらに悪化することもある。多くの人はこのリスクを分かっているからこそ、大きな望みを抱かず、平々凡々の暮らしに甘んじているのかもしれない。

　現代社会には“パソコン一台で月額100万円” “YouTubeで人生逆転勝利” “株で脱サラ”といった謳い文句があふれており、チャンスはいたるところに転がっているように見える。しかし、成功し、人生を大逆転させた人はわずかであり、ほとんどの人がノノのように期待を裏切られて、心の傷を深めている。

　終盤では「人生はな　死ぬまで敗者復活戦なんだよ」という誠司の言葉が響いていた。敗者からの復活が困難に思える今の時代、この台詞が本作において今後どのようにつながっていくのか楽しみだ。

（文・西田梨紗）

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