ありったけの謎の提示とどんでん返し

『キャスター』第1話©TBS
『キャスター』第1話©TBS

 最終的に発覚したのは、関東医科大学と内通していた羽生官房長官のスクープ。しかし、視聴者でさえも待ち望んでいた悪党が成敗される結末は、最後まで訪れることはなかった。パンパンに膨らんだ熱狂と興奮は、大々的に破裂することなく萎んでいく。

 視聴者は肩透かしを喰らったような感覚になるかもしれないが、実際のところ、瞬く間に世間の注目を集めることができる情報を持っていながら、進藤のようにすんでのところで踏みとどまれる人がどれだけいるのだろうか。

 過熱する正義に身を任せて、カタルシスを得るために「報道」が存在するわけではない。絶対の確証がないニュースを流布するのではなく、あくまで「裏どり」を重視する進藤の姿勢は、報道に携わる人間に限らず、今の世の中で誰もが求められている思慮分別のある行動だ。

 加えて、初回では物語のカギを握りそうな謎が多くちりばめられていた。冒頭で進藤の父・松原(山口馬木也)が見ていた航空自衛隊の輸送機が墜落した事故のニュース。崎久保の脳裏に一瞬、浮かんだ女の子の遺影。「本当、キャスターがいちばん嘘つく動物だよね」と吐き捨てて、テレビを消す少女。

 怒涛のテンポで進んでいく初回放送は、主要な登場人物の顔見せとありったけの謎の提示、どんでん返しに重きが置かれ、これからどのように物語が進んでいくのかは正直、わからずじまいだった。しかし、進藤が最後に放った「我々、報道は真実の奴隷じゃない」というセリフは、この作品を根底から支える言葉となる気がする。

(文・ばやし)

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【了】

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