今井(松本怜生)もまた事情を抱えていた
会社で肩代わり制度を利用していた今井(松本怜生)にも別の事情がある。礼子の穴を埋めた一方で、有給も申請していた今井。礼子にはゲーム旅行と説明していたが、実際のところはガンのためにそう長くないと申告された愛犬と過ごすための時間だった。
仕事中も家族であるココアの状況が気になってペットカメラを眺める。それは親バカとかではなく、病気のココアが元気でいるのか心配だから。そんな中で、次々と他人の仕事が新たに増える状況は、紛れもない苦境だったはずで愚痴のひとつやふたつ言いたくなってしまう。
礼子に対して「復帰するの早かったんじゃないですか」と嫌味は口にしたが、直接的な愚痴はこぼさなかった今井。そこには、自分よりも大変な状況の礼子が愚痴も言わず懸命に戦っていたのを間近で見てきたという理由が隠されている。
現状に不満を言わないのは美徳とも言えるが、辛いことは共有すればいいし、苦しいときには肩を貸せばいい。互いに弱みを見せ合い、海の上に降る雨を見逃さなければ、もう少しだけ生きやすくなるのではないか。そんな社会への理解を『対岸の家事』は優しく示唆する。
だが、ドラマの優しさの象徴でもある詩穂が人知れず涙を流していた。彼女の考え方や生き方にも大きく影響を与えていたであろう母親を思い返していたようだ。すでに他界しているが、第4話では彼女の家族とのエピソードが描かれそうな予感。いかにして今の詩穂が形成されていったのか、その過程に注目したい。
(文・まっつ)
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