普通の日々のなかに存在する小さな幸せ

『しあわせは食べて寝て待て』第3話 ©NHK
『しあわせは食べて寝て待て』第3話 ©NHK

 さとこの母・惠子(朝加真由美)は、“食べて寝て会社に行っている”さとこの毎日を、「普通ね。つまらない」と言っていた。しかし、普通の日々のなかにも、小さな幸せはたくさん存在する。

 たとえば、漬けていた梅シロップが完成したとき。さとこは心の底から「幸せ〜!」と思っているような笑顔を見せていた。人生に希望を見出せなくなっていたさとこにとって、出来上がりまでに1ヶ月かかる梅シロップは、生きる希望のようなものになっていたのではないだろうか。
 
 また、価格高騰によりなかなかお米が買えなくなっていたときも、棚からぼた餅のような形で、新米のお裾分けをいただくことができた。お裾分けというのは、ただ食材をもらうだけでない。もらった人からの愛情を感じることができるので、心も満たされるのだ。

 司(宮沢氷魚)に「粥有十利」(=お粥には10個の利点がある)という言葉を教えてもらったさとこは、早速お粥を作り、満足そうな笑みを浮かべる。

 病気になる前と比べて、できることは減ってしまったかもしれない。でも、確実に心は豊かになっているように見える。最初は乗り気ではなかった団地生活だが、引っ越してから、「自分が死んだら…」なんてことは考えなくなったし、「あの人たちに囲まれているから、わたしは生きていける」と思えるような“家族”にも出会うことができた。

 いつか、さとこが病気になったからこそ、今の幸せがあるのだと思える日が来たら。すべてのマイナスが、オセロのように一気にひっくり返るはずだ。

(文・菜本かな)

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【了】

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