当事者意識の希薄さ

ドラマ『地震のあとで』第3話©NHK
ドラマ『地震のあとで』第3話©NHK

 村上春樹の原作と時代設定は異なるが、ドラマでは東日本大震災が起きた2011年とコロナ禍に飲み込まれる2020年をシームレスに繋いでいるため、地震が起きたあとの喪失と未知の出来事に対する不安が入り混じって表現されていた。

 S字フックが連なるように喪失と不安は連鎖していく。未知なる脅威がいつの間にか喉元まで迫ってくる感覚を、物語の登場人物たちは断続的に抱いている。

 さらに、本エピソードで明確に描かれているのが当事者意識の希薄さだ。幼少期から神様の子どもとして崇め奉られて生きてきた善也も、過去にさまざまな男と愛もなくまぐわったことを告白する善也の母も、どこか冷めた目線で自身の人生を見つめていた。

 しかし、善也は母親から伝えられた父親と思しき人物の目印となる、右の耳たぶが欠けた男を電車内で見かけたことで、今まで自分事として捉えられていなかった神様と父親の関係性を明確に意識する。誰もいない球場まで本能の赴くままに父親の存在を追い求めたことは、彼の人生の分岐点になりうる出来事だった。

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