ドラマ『いつか、ヒーロー』第3話考察。曽田陵介“瑠生”が社員証を裏返す仕草が切ない…“深い闇”を感じたセリフとは?【ネタバレ】

text by 西田梨紗

桐谷健太主演のドラマ『いつか、ヒーロー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)が現在放送中だ。本作は、20年間消息不明だった謎の男が、夢を失くした若者達とともに腐った大人を叩きのめす不屈の復讐エンターテインメント。今回は、第3話のレビューをお届け。(文・西田梨紗)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:西田梨紗】

アメリカ文学を研究。文学研究をきっかけに、連ドラや大河ドラマの考察記事を執筆している。社会派ドラマの考察が得意。物心ついた頃から天海祐希さんと黒木瞳さんのファン。

不平等な世の中で変わらずにいるのは難しい

『いつか、ヒーロー』第3話©ABCテレビ
『いつか、ヒーロー』第3話©ABCテレビ

 本放送では、高卒認定を取得後、大学に奨学金で進学し、五大商社の子会社に勤務する瑠生(曽田陵介)に焦点が当てられた。

 彼は“商社マンになりたい”という大きな夢を幼い頃から抱いており、彼なりに努力もしてきた。けれども、現実は思っていた通りにはならず、就職先は大手商社系列の築富建住の営業職だった。

 周囲には築富物産の社員であるかのように語り、SNSではこの商社の社員として振舞っている。とはいえ、瑠生は築富物産の社員ではないことを痛いほど自覚している。エレベーターに築富物産の社員と思われる人たちが乗ってきたとき、彼が首から下げた社員証をさりげなく裏返すシーンは切なかった。

 五大商社をはじめとする大企業に憧れを抱く人は多い。“大手企業の社員になって、世界を飛びまわりたい”という志を抱き、就活に励んだ人もいるだろう。しかし、夢と現実を就活を通して知る人が大半だ。

 大手企業で、クールに働いている人は労働者人口のうち一握りにすぎないのだから…。それでも、現実を受け入れられず、自分の心を守るために、所属する企業名を言葉巧みにぼかしてしまうことがある。

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