企業に所属することだけが「生き方」じゃない
筆者は謎の男・海斗(宮世琉弥)が瑠生に放った次の台詞が、海斗や瑠生と同世代の人たちがよく口にする“親ガチャ”の問題を表現しており、印象に残った。
「世の中不公平だよな。親から土地を譲り受けただけで孫まで財産を残せる者もいる。一方でヤクザの息子に生まれたばかりにブラック企業しか就職先がなく心を殺して生きていく者もいる」
20年以上真面目に生き、大学を卒業しても、よい就職先に恵まれない人は珍しくない。仕事が辛くても、生活のために耐えている人もいる。あるいは、瑠生のように会社の方針に従っているうちに感覚が麻痺してしまった人もいるだろう。
その一方で、世の中には、働かなくても生活に困らない人もいるし、経済的に余裕がある家に生まれ、留学など特異な経験が評価されて、大企業に難なく就職できた人もいる。
そうした中で、本放送を通じて、人の生き方は企業に所属することだけではないと改めて感じた。誠司(桐谷健太)のように子どもの成長に携わることを生業にする生き方、要蔵(でんでん)のように社会のレールから外れて(?)マイペースに暮らす生き方もある。
また、愛情が人に与える影響についても考えさせられた。この世の中、性根が悪い人間ばかりではないとは思うが、人間が弱いのは確かであろう。瑠生のように自己の利益のために悪徳な営業を行い、他人を自殺に追い込んだり、祖母に似た心優しい女性を騙したりする人も存在する。
けれども、瑠生が誠司との再会をきっかけに「いい子」だった自分を取り戻せたように、誰かに愛情を注がれた経験があれば、本来の自分を取り戻せることもある。
瑠生が生き方を見直せたのは、何よりも祖母と過ごした日々があったからだ。自分の存在を肯定し、愛情を注いでくれた祖母がいたからこそ、瑠生は他人の痛みや優しさに敏感な大人になれた。