のんの声が”かえるくん”に輪郭を与えた…『地震のあとで』が4話かけて描いたものとは? 最終話考察&感想レビュー。【ネタバレ】
土曜ドラマ『地震のあとで』(NHK総合)が完結を迎えた。映画『ドライブ・マイ・カー』(2021)の大江崇允が脚本を務める本作は、村上春樹の珠玉の連作短編を原作にした“地震のあと”の4つの物語。今回は、最終話のレビューをお届けする。(文・ばやし)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:ばやし】
ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。
「その後」を明確に描いた『地震のあとで』第4話
阪神・淡路大震災に端を発する人々の心の揺らぎや戸惑いを映し出してきた土曜ドラマ『地震のあとで』がとうとう最終話を迎えた。
これまで原案となった村上春樹の短編小説「神の子どもたちはみな踊る」の各エピソードの時代設定を変更しながらも、世界観とストーリーを自然と時代背景に溶け込ませてきた。ところどころアレンジを施しつつも、セリフや人物造形などは原作を忠実に再現しており、バランスよく45分の映像に収めていたのも印象的だ。
しかし、第4話の「続・かえるくん、東京を救う」は、今までの各3話とはやや趣向が異なる。そもそも短編小説に収録されているのは「かえるくん、東京を救う」であって、今回放送されたのは「続編」となる新しい物語。創作されたオリジナルストーリーとして、明確にエピソードの「その後」を描いている。
舞台は2025年の東京・新宿。漫画喫茶で暮らす地下駐車場の警備員・片桐(佐藤浩市)は、早朝の歌舞伎町を歩いて勤務場所へと向かう。
彼は紛れもなく「かえるくん、東京を救う」の主人公でもあった片桐だった。30年の時を経て、片桐は信用金庫の融資を担当する会社員から、住まいをもたない地下駐車場の警備員へと生活様式を変えていた。