「このナルシストが!」
川栄李奈vs富田望生の壮絶な演技合戦

ドラマ『ダメマネ! ーダメなタレント、マネジメントしますー』第2話©日本テレビ
ドラマ『ダメマネ! ーダメなタレント、マネジメントしますー』第2話©日本テレビ

 そんな沙紀と、芸能4部の顔見世公演に代役として出演させようとする道子の壮絶な言い争いが今回のハイライトだった。特に沙紀を演じる富田の、言葉を言い淀む間や、傷付いたような表情は素晴らしかった。

 沙紀にとって、吃音は学校生活をままならないものにしてしまうほど大きなコンプレックスだ。これまでもきっとたくさんのことを諦めてきたのだろうし、俳優になりたいという夢も叶えられそうもない。実際、沙紀は以前にもTOYOプロダクションのオーディションを受けて落ちてしまっていた。

「(わたしの苦しみは)あなたにはわからない」という沙紀の言葉はもっともだろう。当事者じゃない人間がいくら想像力を働かせたところで、同じ苦しみを味わえるわけではない。だが、「吃音の人間は幸せにはなれない」という沙紀に、道子は「吃音の人間は不幸と語る権利はない」と一蹴する。

 みんなそれぞれコンプレックスがあっても、それを克服したり強みに変換したりして前に進んでいる、ということを伝えたかったのだろう。そして、他人の目を気にして余計に緊張してしまう沙紀に「このナルシストが!」と言い捨てる。

 この一言が、今回犀川が用意したセリフだった。かなり厳しい言葉である。しかし、短期間ではあれど、ここまで並走してきた道子に言われればこそ、沙紀の心も動いた。誰かれ構わず言うには危険すぎる言葉だが、犀川は道子ならばとこのような采配をしたのだと捉えたい。

 結果、顔見世公演はクセツヨな面々の個性が発揮された笑いと、沙紀の持ち前の演技力が生きて大盛況で幕を閉じた。沙紀のコンプレックスへの復讐は、ささやかながら着実な一歩を踏み出したと言えるだろう。

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