“できなかった経験”が導いたしあわせ

『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』第5話©TBS
『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』第5話©TBS

「子供は親を選べない」とは嫌な表現だが、納得しなければならない側面もある。子供の頃の決断なんて親由来のものが多く、「喜ぶから」、「褒められるから」といった理由で動くもの。

 だから、“親ガチャ”という言葉も生まれるし、子供の人生は親次第というのはひとつの真実でもある。苺は専業主婦の詩穂の元に生まれたことで、失った機会もあるのかもしれない。

 だが、だからといって苺が不幸だったかというとそれは違う。詩穂は自身の経験から、難しい問いの答えも見つけている。

 親のせいでバスケットボール部を辞めなければならなかったが、友人の髪を結い褒められたからこそ美容師への道を選び、現在の夫・虎朗(一ノ瀬ワタル)に出会った。専業主婦として娘と過ごすいまはかけがえのない時間であり、この幸せを得るために無駄なことなどひとつもなかったわけだ。

 たしかに中谷の言うように、子供のうちに様々なことと触れ合い経験できるのは後に武器となりうる。だが、昔を思い返したときに思い出されるのは体験ばかりだろうか。

 詩穂のように何かを経験しなかったからこそ、知らず知らずのうちに得られたものもきっとあるだろう。気付けなかったそんな真実を優しく解き明かしてくれる詩穂には尊敬の念を禁じ得ないと同時に、そういう人間でありたいなと思わされる。

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