司の結婚観

『しあわせは食べて寝て待て』第5話 ©NHK
『しあわせは食べて寝て待て』第5話 ©NHK

 また、第5話では司の結婚観についても明らかになった。

 司は、いわゆるヤングケアラーだったらしい。仕事をする母親の代わりに、祖母の介護をしながら、家事をしていたようだ。そして、祖母が亡くなったあとは、母親が倒れてふたたび介護生活に。そんなとき、たまに食事に連れ出してくれる同僚がいた。

 母親が亡くなったとき、その人から「わたしたち、結婚しない?」とプロポーズをされたのだが、司は「…ああ、まだ続くのか」としか思えなかったと言う。だから、自分は結婚に向いていない…と思い込んでいるようだ。

 おそらく、プロポーズされたときの司は、まだ20代そこそこだったはず。結婚に夢や憧れを抱く人が多いなか、司は「…ああ、まだ続くのか」と思ってしまった。どれだけヘビーな人生を歩んできたのだろう。わたしたちの想像を絶するほど、さまざまな葛藤を抱えながら生きてきたのだと思う。

 成人してからだが、わたしも親の介護をした経験がある。介護というのは、子育てとは違って希望がない。もちろん、画期的な治療薬が開発されて劇的に症状が良くなる…ということもあるが、多くの場合は「介護の終わり=死」だ。

 24時間、終わりの見えない介護。しかも、どんどん症状は悪くなっていく。当時は、心配のあまり熟睡もできなくて、身体もボロボロだった。このしんどさから、解放されたい。でも、解放されるということは、親が死んでしまうということ。

 それは、絶対に嫌だ。何度、「どうすればいいの、もう…」と涙を流したことか。大人のわたしでも辛かったことを、司は学生で、かつ二回も連続で繰り返してきた…と考えると、本当に頭が下がる。

 今は、「僕、向いてないんですよ。結婚に」「自由でいないと、自分が保てないんですよね」と言っている司だが、柿のように、いる場所、会う人によって考えが変わることはあるのだろうか。ゆっくり、ゆっくり、傷を癒していけばいい。その隣にはきっと、優しく光を当ててくれる鈴やさとこがいてくれるから。
 
(文・菜本かな)

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